東方が人気な理由

東方全体のイメージとして、冷めてひねくれているというのがある。キャラクターの会話や、音楽がそれをよく表しているだろう。そして、その冷めてひねくれたイメージは、クールな現代っ子、とりわけ「中二病」の人々の心にぴったりとはまる。
また、東方が流行るにも関わらずシューティングゲーム自体はいまいち盛り上がらない原因もそこにある。シューティングゲーム、とりわけ商業でよくある「古典的な」シューティングの中核には「燃え」がある。ハイテンポな音楽、殺意を剥き出しにしたかのような攻撃、派手な爆発。これらはプレイヤーの感情を燃え上がらせる。だがしかし、その熱さはクールな東方ファンの目には却って馬鹿馬鹿しく映ることさえもある。その結果これらのシューティングには目もくれないず、それどころか激しく排撃するまでに至るのだ。
東方以外の同人シューティングの寂れ方もこれに関係している。同人シューティングは、東方の影響を受けた「クールなシューティング」と、古典的なシューティングの影響を受けた「熱いシューティング」に大きく分けられる。熱いシューティングがなかなか受け入れられないのは先の説明と同じである。
それならばクールなシューティングは流行っても良さそうなものだが、こちらも東方に比べると盛り上がりが欠ける。その原因は、クールなシューティングがあまりに東方の影響だけを強く受けすぎているからではなかろうか。先述したとおり、東方が好きなプレイヤーにとって、それ以外の熱いシューティングは疎遠なものである。そのため、同人でクールなシューティングを作ろうとする人の動機が「簡単そうだから」と「東方が好きで、東方のような物を作りたいから」というものがメインで「シューティングゲームが好きだから」という動機は少ない。「簡単そうだから」という動機で生まれたシューティングの品質が高くないことは言うまでもないだろう。そして「東方のような物を作りたいから」という動機で作り始めた人は、東方以外のシューティングを知らなさすぎる。東方しか知らないために、作られるものは「東方の劣化コピー」か「東方っぽいゲテモノ」となってしまい、ゲームとしての品質が落ちるのである。そして、当然だが品質の高くないゲームばかりのジャンルは盛り上がらない。よって、品質の良いものがある「熱いシューティング」はプレイヤー層が薄すぎ、品質の良いものが少ない「クールなシューティング」は人がよらないために、同人シューティング全体が盛り上がらないのだ。
ちなみに、東方を作ったZUNはシューティングゲームが好きでかつクールだったので今の流行を生み出せたのだろう。今の同人シューティング、さらにはシューティングゲーム界全体に求められているのも、まさにZUNのような人ではないだろうか。